「浴衣」や「夏物」はいつまで?着物と季節の関係とは

「浴衣」や「夏物」はいつまで?着物と季節の関係とは

浴衣と言えば夏に着るもの、というのは知られていますが、残暑厳しい9月にも着ていいのでしょうか?
今回は、着物の種類や衣替え時期のルールと合わせ、「浴衣が最適な季節」についてお話します。

浴衣は6月~8月が“イマドキ”の風潮

「浴衣を着られる季節」―これには明確な決まりはありません。
あえて期間を示すとすると「盛夏」(梅雨が明けた頃から8月まで)と説明されることが多いですが、実際には半袖を着る時季と考えておいて差し支えありません。普段着として楽しむ人を見ていると、6月頃から8月が浴衣の本格的なシーズンと言えます。
とは言え、6月初旬や梅雨の頃だと朝晩は素足に下駄では冷えるときも…。浴衣は本来「寝間着」でとてもカジュアルな装いですし、暦よりもその日の気温によって判断してかまいません。

地元のお祭りをきっかけに“浴衣解禁”することも

地方によって「浴衣の季節」の捉え方は異なると言われています。
例えば東京では5月中頃に浅草で行われる「三社祭」を“浴衣解禁日”と考える文化があり、地元に住む人々はこの日を境に浴衣を着はじめるそうです。
名古屋市であれば6月はじめの「有松絞りまつり」、兵庫県姫路市では、6月下旬の「姫路ゆかたまつり」が、浴衣にまつわるお祭りということもあり、浴衣姿の人が大勢集います。
ちなみに、京都の伝統的なお祭り「葵祭」は5月中旬ですが、こちらは着物姿がほとんどです。

また、9月に入ると街の雰囲気は「秋」になりますので、出かける先によっては浴衣を着て街を歩くと少し浮いた存在になってしまうことも。ただ、現代は9月下旬でも真夏日となる日がありますし、9月はじめに花火大会やお祭りをするところもありますよね。そのため、カジュアルな場であれば9月初旬までなら浴衣を着ても違和感はないとされています。

着物の種類は気候に合わせて3つに分けられる

「着物」と一口に言っても季節によって着る着物は異なります。
「袷」の着物は、裏に「八掛(はっかけ)」と呼ばれる裏地がついたもの。着る期間がいちばん長いので、一般的に着物と言うと「袷」を思い浮かべる人が多いです。
「単衣」は裏地がなく一枚で仕立てているため、袷よりは涼しいです。
さらに、一枚仕立てで透け感があり、薄手の素材でできたものを「夏物(薄物)」と言います。下着や襦袢を重ねるので夏物でも十分暑いのですが、透け感があるので見た目には涼やかです。

ちなみに、ウールや紬、木綿の着物は裏地が付いていませんが、これらは真夏以外ならいつでも着られますよ。

どのタイミングで衣替え?着物のルールとは

着物の専門書では「袷(あわせ)」の着物は9月~5月、「単衣(ひとえ)」の着物は6月・9月、「夏物」は7月・8月と明記されてます。着付け教室でもそのように習います。
これに合わせて衣替えするというがルールとは言われていますが、実際には「あくまでも目安で」ということが付け加えられています。
普段着として楽しむならもっと柔軟でよいというのが最近の考え方。というのも、このルールが決められた何十年も前と今では、気候がかなり変わっていますよね。5月や10月でも汗ばむ陽気が増えています。

そのため、6月・9月でも夏物を着る人、4月や10月にも単衣を着る人が増えています。趣味として季節を問わずに着物を楽しみたいなら、一枚は単衣を持っておくことをおすすめします。暑い中我慢して着るのがつらくて、着物を着るのが嫌になってしまってはもったいないですよね。カジュアルな場なら着心地を優先して着ても問題ありません。

ただし、お茶会や式典などかしこまった席ではルールを重んじます。招いてくださった方に失礼のないよう、決まりに沿ったものを選びましょう。

ルールは目安。天候や場に応じた着物選びを

以上のように、ルールはあっても絶対に守らなくてはいけない、ということはありません。普段着の場合、あくまでも目安として覚えておいた上で、自分にとって心地いい着方を選んでみてくださいね。

おくむらかなこ

関西在住のライター。ビンテージファッションが好きで、その延長として着物も普段着として楽しむように。大胆な色柄が多い昭和初期のアンティーク着物が特に好み。京都のガイドブックや情報誌の編集・ライターをしていたことから、京都の文化やグルメにも詳しい。

着物ライター おくむらかなこ
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